日本語学習者は今後減っていくのか

 この間、あるLanguage exchangeのイベントに行きました。場所はシンガポールで、ドイツ語、イタリア語、スペイン語、中国語、日本語などの各言語ごとに集まって、その言語を話して練習とソーシャライズをしようというイベントでした。

 シンガポールの日本人社会というか、日本語社会では、私は割と長くいる方で、誰か知り合い来るんだろうなーと思ってました。知り合いの日本語ペラペラのインドネシア人のYさんと偶然出くわし、軽く世間話をしました。

 Yさんは色々な言語で彩られた16人ほどが座れる細長いテーブルを見ながら、

「いやー減りましたね。年々減っていく傾向にありますね。」と言いました。

「本当ですね」と答えると、「昔はここから、あっちまで全部Japaneseだったのに、今はこれだけですよ」とYさん、そしてそこに「Excuse me, Is this French table?と誰かが来ました。」自分たちは…「Oh we must shrink up」と言いながら集団を小さくし彼女にスペースを用意しました。

ヨーロッパから見たアジア言語

このような話は実は少なくないようで、欧州でも中国語は今そこそこ人気があり、日本語はそんなに人気が無いというトレンドが続いているようです。そして、財政難に伴う予算や生徒の人数の関係も影響しているようで、欧州の大学では日本語学科を他のアジア言語やアジア文化の学科と併合してしまったりしているようです。

シンガポールでは、皆まぁ中国語を話せるのですが、練習したい人もいるようで「マンダリンテーブル」もイベントの中にありました。

シンガポールではまだ、日本語の地位はそれなりにあります。日本の企業が多いし、日本のアニメや映画を見て、日本語を勉強しようという気持ちになる人もいるようです。欧州では主に映画や文化や観光がきっかけで、日本語を勉強したいと思う人も多いようでした。

また、欧州では中国語は中国経済の伸びが続くに伴い、学習者が増えているようです。言語を話すきっかけの一つとして、文化や経済が面白いという理由の他に、就職難を背景として、現実的に就職に有利になりそうな言語を勉強しようという人も多いです(憶測)。

たぶん英語やドイツ語が主に学ばれているような感じもしますが、中国語はおそらくアジア系の言語では一番人気なのかなという感じもしていて、ポーランドのPoznanみたいな地方都市でも中国人留学生がいたりするので、言語交換をレストランでやっているような現場に出くわしたこともあります。

中国や日本は欧州にとっては少し幻想混ざって見られている面もありますが、中国には「カンフー」のようなステレオタイプの他に、上海や深圳には昔の欧州人が日本に抱いていた「未来を先取りした感覚」もあります。

中国旅行は疲れますが、欧州は休暇が長いこともあり「見に行ってみよう」と思う人も多いというのがあるかもしれません。そして欧州の会社にも中国でビジネスチャンスがあるため、Chinese speakerは就職に有利なのかなというモチベ―ションも学生の中にはあるかもしれません。

言語を学ぼうとするモチベーションの対比

中国語を学ぼうとするモチベーションが経済や文化なら、日本語を学ぼうとするモチベーションは何なのだろうと考えてみたとき、昔はマレーシアやシンガポールに大量に投資していたため、「経済」という面もあるかもしれません。今でも日本語学習者の労働市場は東南アジアにもありますが、彼らのライバルは本国で残業塗れでクソみたいな労働環境に疲れた日本人だったりもします。(ブラック出身者やIT関係など、昔はカスタマーサービスも)

他には文化や観光、そして日本は何より漫画やアニメ、映画、ゲームと言ったコンテンツ産業が強く、それが日本語を勉強しようというモチベーションになっている人もいます。例えば、アニメがきっかけで日本について知りたいと思った人も多いようです。

例えばガンダムや私は知らないのですが、聖闘士星矢?などがきっかけの人はとても多いように思われ、チャゲアスのファンの人もいました。世代で言うと20代後半から40歳後半か、50歳前半くらいかなと思います。

シンガポールで働くとJapanese speakerの人に助けられることはとても多く、こちらも力を貸す機会もあり、英語が苦手な日本人としては彼らとの繋がりはとても大切なものになっています。しかしながら、私たちの次の世代、20代前半や今の10代の人たちがこちらに来るときにはどのような環境になっているのでしょうか。

残念ながら日本語学習者は減っているのかなというのが個人的な感想で、今後シンガポールに来る日本人も、より英語力や中国語を強化しなければいけないなという感じがします。大学出た時点で英語はかなり流暢に話せてほしい。そういう時代はすぐそこです。

日本語の言語習得のモチベーションとなる業界では、現在残念な話が後を絶たないようです。

私の中ではアニメ製作は搾取に晒されていると言ったニュースは記憶に新しく、魅力的なコンテンツが今後出てくるのか心配な面もあります。

 

一方で中国ではドローンやIOT、ゲノム界隈でも面白い話は多く、その言語に将来性を感じる人も多いのではないでしょうか。

日本語学習者の疲弊

この間、あるヨーロッパの友人と久々に話をしました。彼女とは言語交換のMeetupで会いました。

コーヒーを一口飲んだ後に「私、日本語の学校辞めました」と彼女はつぶやきました。

やっぱ忙しかった?と訊くと、会社でも日本語を話さなくてはいけなくて、日本人のカスタマーサービスは変な質問があって大変…「顧客が自分が何をしたいか分かってないのに電話をとりあえず掛けてくるし、質問の意図がよくわからないことが多い、そしてこっちで何でもできると思ってる。」と話してくれました。

私も一時期カスタマーサービスしていたので、その難しさと、お客さんがある程度供給側と消費側の責任の範囲を理解してはいないので大変だろうなーと思って聞いていました。それ以前彼女は日本人の顧客を対応していなかったので学習を続けていましたが、日本人を担当するようになると…

「もう疲れた」

という感じでした。

もう一人の知り合いは、ある東南アジアの国で日本企業の営業職をしていたそうです。

彼が働いていた会社は、彼曰く「考え方が古い人」らしく残業代や、休日客先に向かうための長期運転、そしてオフィスの有る街に帰ってくると、既に夜の18時、でももうみんな帰って、報告書は明日見られるのにオフィスに戻って報告しなければならない、そして残業代を交渉すると「何で? 給与払ってるじゃん!」と言われるという会社でした。

彼は既にその会社を退職しています。

他には「無能は駐在のために働いて会社に利益を出しているみたいで嫌だ」とか、「未だにFAXを使っていて時代遅れだ」など様々な愚ch…ではなく苦情が私の元に寄せられています。

日本の労働環境が日本語学習者のモチベーションを削ぐ例は海外でも後を絶たず、日本での働き方に対する改善が良い方向に進まない限りはこの傾向は続いていくのだろうなと考えています。

シンガポールからすると「日本語学習は趣味の範囲に留めておくのがちょうど良い」ということになるかもしれませんが、言語学習に対する経済的なメリットが無いと、その言語の海外での将来は少し不安なものになるでしょう。

日本語の将来を握るもの

私がシンガポールから見る限り、それは意外にも日本における「労働環境の改善」や日本人が「お客様は神様」意識を捨てて、ある程度労働の供給と、サービスを消費している側の節度ある関係を再構築することにあるのかなという感じがしています。

また、日本の労働の悪い面は「本社の要求」や「駐在員の輸出」、「担当者の責任回避を目的とした謎のメールのやり取り」と言った形で仕事量を増やし、海外で悪影響を与え、それがグローバルに展開されます。日本に対する文化的なイメージが悪くなり、長期的に少子化で落ちてきている経済的なメリットが少なくなると、日本語学習のモチベーションは下がっていくことでしょう。

そして、スピード感の遅い職場での就労経験は将来の転職についてメリットがあるのか、明確なJob descriptionが無く、専門性のない職場は自分のキャリアにプラスなのか、その点も厳しく考えて、将来世代は自分が生き残る方法、生活していく方法を真面目に考えています。

上記を総合して日本での働き方改革が上手く行くように、このような情報をブログにして発信することしか私にできることは無いので、そうしてみました。