(2011年6月ごろの記事です)

自衛隊初の海外基地

去年の8月よりジブチ国際空港内で建設を行っていた、海上自衛隊の基地が6月7日に完成しました。
自衛隊は海賊対策として護衛艦2隻とP3C2機が派遣しています。

(ちなみに対潜哨戒機はアメリカ・スペイン・ドイツ・日本が合わせてP3Cを7機、そしてフランスがアトランティックを1機派遣しているらしいです。対潜哨戒機は一般に航続距離が長く、長時間滞空でき、水上捜索に優れ、通信能力が高いため派遣されています。)

基地の面積は12ヘクタールほどで、エプロン3機分、宿舎、厚生施設で成っています。

アデン湾は年間約20,000隻が通過し、アジアとヨーロッパを結ぶ国際的に重要な航路です。それがどれだけすごい事かというと…。この先にはスエズ運河があり、ヨーロッパに抜けられます。ナセル元エジプト大統領がスエズ運河を国有化し、その通行料で高さ111m、長さ3,830mもあるアスワンハイダムが建設され、国有化の際にはイギリス・フランスとエジプトの間で戦争まで起き、イギリスを撤退させたカナダのピアソンはノーベル賞まで貰いました。
また、スエズ運河を通る基準がスエズマックスと呼ばれ、スエズ運河を通れず、アフリカをぐるーっと回ってケープタウンの喜望峰を通らなければいけない船は「ケープサイズ」と呼ばれます。船のサイズの名前を定義し、戦争まで起こしてしまうくらいジブチが面するアデン湾から、スエズ運河を通り、ヨーロッパへ抜ける海路は重要なのです。

ただ、近年海賊がアデン湾に出てくるため、スエズ経由航路を通る船の保険料金が値上がりし、ケープルート(アフリカぐるーっと)を通る船も増えてきました。(国際貿易には船荷保険が必要になります。) しかも、ヨーロッパやアラブ諸国から日本へ向かう船が多いので、自衛隊を派遣しなければ非難轟々になるのはわかりきっています。そのような背景もあり、初の海外自衛隊基地に至ったというわけです。たぶん。

隊員の皆さまがご無事に再び祖国の土を踏むことを心よりお祈り申し上げます。

海賊のはじまり

なぜソマリアの人々が海賊を始めたのか、私には確かなことは言えませんが情報は仕入れられます。(毎度そうですが) ソマリアはもともと北が連合国イギリスの植民地で南は枢軸国イタリアの植民地でした。戦後、独立し統一を果たしたのですが、うまくいかなかったのか内戦が勃発しました。
それに乗じて欧州アジアの漁師が乱獲を始め、貧乏で老朽化した船しか持てず、乱獲を止めに行ったソマリア人を焼き殺したり、やりたい放題していたという記述もあります。
その後、これは結構確かなことなのですが、先進国が有毒廃棄物を近海に捨てたりもしていました。しかし、インド洋の地震で有毒廃棄物が浜辺に打ち上げられ、中身が漏れ出し、村人が死傷しました。そしてこの問題は世界が知る所となりました。
とても見た目は綺麗な色をした海なのですが、普通に考えてこんな海で漁なんてできるわけがありません。彼らは生計を立てる手段を失い、その結果、新しい仕事が海賊だったようです。

なんつうか、自国以外じゃ人の命なんてどうだっていい

この動画。これの5分15秒あたりから見ると、「人の命の価値は0とイコールだ。価値があるのは金、金、そして金」という言葉がすごい印象に残っています。
そして幸いにも翻訳してくれてた人を発見。内容的にはソマリアの不法投棄の取材をしてたイタリア人の記者「ミラノの人?」が殺されたドキュメンタリーみたいな感じです。
他にもロシアの旅行会社が海賊退治のツアーなんてのがあり、オーストリアのニュースが報じていました。これです。
この記事中に、”They are worse than the pirates,” said Russian yachtsman Vladimir Mironov. “At least the pirates have the decency to take hostages, these people are just paying to commit murder,” he continued.という文章があり、この航海に出ている船乗りは複雑な心境だろうななんて思ったりしました。

海賊に投資して分け前を分配する株式市場がオープン!! というかもうある。

2009年ごろにロイター通信が報じたニュースで、海賊行為に投資する株式市場がオープンしたというものがありました。その市場は海賊に、武器を供給(投資)し、拉致誘拐で得た身代金が配当される仕組みのようです。街では海賊行為で得た収益の一部が街に還元され、病院や学校などの生活に必要不可欠なインフラが整備されていったそうです。株というのは大航海時代に海賊に襲わたり、船が遭難するリスクを考慮して生まれたもの(東インド会社とか)だったのですが、こういう結果になるとはなんとも皮肉な話ですね。
国外のソマリア人や海外からの投資もあり、市場は大変賑わっているそうです。風のうわさでカタールにもそんな会社があると聞きました。

“I am waiting for my share after I contributed a rocket-propelled grenade for the operation,” she said, adding that she got the weapon from her ex-husband in alimony.

“I am really happy and lucky. I have made $75,000 in only 38 days since I joined the ‘company’.”

という文章を読んだときは不覚にも笑ってしまいました。

(どんな夫婦だよ…)

力あるものが勝利する

ここまで海賊国家になりそうなソマリアの海賊の話をしてきましたが、世界で最初に国家ぐるみで海賊をやっていたのはイギリスです。大航海時代にポルトガルやスペインは貿易(といってもえぐい事はたくさんやってきた)で栄えましたが、イギリスはそれらの国の商船を襲撃して富を集めました。そして、産業革命を起こし、開発経済学では世界のトップランナーを走った国になりました。

今でも力のある国は何をやってもゆるされるような雰囲気があります。国際社会は一見秩序があるように見えますが、そうでもないと私は思います。隣接した弱い国を襲って、そこの民族を虐殺するような山賊国家だって存在しますし、今でものうのうとしています。(もちろん、戦争に負けたら一気に悪者扱いです。)
力というのは武力であり、影響力です。世界ではソマリアは取るに足らない小さな国ですが、その中のさらに小さな存在である海賊は、アデン湾では力があり、自分の街に富をもたらす影響力があります。海賊は世界では犯罪と見なされますが、ソマリアの小さな街では必要な存在なのです。
また、悪いことをしていても「正当性」があるのなら、そして正義が無いのなら(正義が食い違うなら)、海賊をしても、その海族を客船クルーズで殺しにいっても、不法投棄をしても許されているのが私たちが生きている世界なのかもしれません。