ウクライナ航空でヘルシンキへ

 ドバイ空港に1日滞在したのちにウクライナ航空でヘルシンキまで旅立つことになっていた。チケットを見るとキエフまでは5時間、そしてキエフからヘルシンキは約2時間のフライトとなっていた。価格は片道で3万円ちょっとだった。

 ウクライナ航空はドバイ国際空港の第1ターミナルから3:30に出発する。ちなみにドバイ国際空港では、カウンターのすぐ脇にそのカウンターに関連する航空会社の出発案内が出ている。そのため、Informationセンターのパネルや係員に教えて貰ったり、総合掲示板のようなものが近くにあれば、それを見るのが良い。

 チェックインは出発3時間前から始まった。チェックイン時にはスマホのカメラで予約番号を見せただけで問題は無かったが、Final destinationと「帰りの搭乗券はあるのか」と訊かれた。「無い!」と答えると、「その次はどこに行くのか」と訊かれる。

 「I will go to Estonia, after Helsinki. Because it is same because of Schengen agreement. So since I am Japanese it is no problem if I don’t have return ticket. If I go Russia, it is problem, but Helsinki, it is no problem」と答える。具合がちょっと悪いのと面倒くささで回りくどい変な英語になる。

 ドバイ空港の係員は上司を呼んでアドバイスを求めた後、無事搭乗券を発行してくれた。預けた荷物はそのままヘルシンキに行くらしい。

 乗客は日本人1名、中国人3名、インド人3人、その他多くのウクライナやヨーロッパの人々だ(見分けはつかない)。第1ターミナルのチェックイン後のエリアは意外とスッキリしているが、市中のような気軽な料金でペットボトル飲料を買うことができるのは自販機くらいだ。(水が1ディルハムだった)

 そして、時間は搭乗開始時刻に近づき、ゲートの前で飛行機を待つことになる。ウクライナ航空の乗務員が綺麗だが、なにか違和感があるのは国際線だがおそらく英語とウクライナ語だけしか通じない感じがするからなのだろうか。しかし、乗客にアラブの人はいなかった。

 搭乗が開始され、Boarding bridgeで渋滞が発生している。機内に入ると理由がわかった。インド人が機内を行ったり来たりして他の乗客が席に向かうのを邪魔しているためだった。相変わらずFreedomな人たちだ。

 運悪く自分の隣もインド人だった。飛行機が離陸する前から肘を自分の体にぶつけて、そっちを見ると「はぁー」とため息をつく。意味が解らない。

 そして飛行機が離陸し、眠りにつくと、肘で2回くらい起こされた。3人掛けで自分は窓側、そして通路側にはウクライナ人のおばさんがいたのだが、彼女も若干いらいらしながら目を閉じて寝ようとしていた。

 翌朝、飛行機はウクライナ上空を飛んでいた。窓から入る朝陽は眩しかった。そういえばマレーシア航空の件ってどうなったんだろうかとか思いながらしばらくウトウトした。

 飛行機の高度が下がってきて、雲に入っただろうというタイミングで窓を開ける。飛行機が雲を抜けると、ウクライナの肥沃な土壌の畑と、防風林に覆われて整備された道路や鉄道が見えて、そのあとに飛行機は滑走路に滑り込んだ。アジアから来ると、整然とした美しい風景に少し感動する。

 キエフの空港では飛行機は沖停めされ、飛行機を出てタラップを降りると涼しいような少し肌寒い空気が身を包んだ。滑走路の反対側では白く塗られて放棄されたようなソ連時代を感じるアントノフの機体と、その反対側に止められている米国最新鋭のBoeing737-900の対比がなんとも面白い光景だった。

 

 バスを降りて空港の中に入ると東ヨーロッパっぽいフォントで書かれた看板に従い、Transferのレーンに進んでキエフからヘルシンキに向かうチケットを受け取り、再び荷物を検査する。

 検査後、売店でハンバーガーとコーラを買った。「クレジット払いはいいぜ!ただチップも欲しい。今いくらあるんだ?」と訊かれ、「10ディルハムしかない」と答えると、「見せてみそ」と言い、それをおもむろにチップ箱にぶち込む。そしてデビットカードで4ユーロ払った。そしてその下には120UAHと表示されていて少し驚く。フリヴニャ(гривня)とかいうウクライナの現地通貨らしい。

 お前チップを沢山くれてありがとう!と言って店員さんとハイタッチをする。金のむしりとり方が上手だ。少なくとも嫌な感じはしなかった。そして、ハンバーガーの鶏肉とチーズは素朴な味で美味しかった。

 空港の中やエプロンサイドには迷彩服の人が目立ち、彼らはたまにウクライナ航空の旅客機も眺めていた。たまにアエロフロートやアゼルヴァイジャン航空やエアアラビアも姿を現す。

 12時ちょっとくらいの時間になり、ヘルシンキへ向かう飛行機に搭乗する。乗った飛行機はブラジルのエンブラエル社が作ったE-190という飛行機でシート配置は2列―2列と快適だった。

 飛行機が滑走路に入り、離陸すると周りの乗客から拍手が巻き起こる。小さな機体は45度のような角度で急上昇していき、なぜか戦闘機の離陸訓練を思い出した。ひょっとして空軍の人かな?

 機内の雰囲気はドバイから来た時と対照的で明るかった。そして機内で酒類やジュースなどが売られて、フランス人の集団が「Cin Cin!!」と言って乾杯し、ワインを楽しんでいた。

 飛行機は高度を下げつつバルト海を渡って、ヘルシンキ、ヴァンター国際空港に着陸した。もちろん拍手は忘れない。ウクライナ航空のエンブラエルの隣には、ロシアのスホーイスーパジェットのアエロフロート機が停まっていた。

ヘルシンキの入国審査では「どこ行くんだ?」と訊かれ「ヘルシンキ」と答えると「観光か?」というので「Yes」と言ったらスタンプを貰えた。荷物も問題なく到着した。

 最近できたらしい鉄道の空港駅に行き、係員に切符売り場について訊くと、「電車の中で買える」ということなので、「Ticket sale」と表示してある車両に乗り込み、5.5ユーロを払ってチケットを買った。「80分以内ならトラムだろうが地下鉄だろうが、なんでも乗っていいよ」ということだった。

列車は緑の豊富な車窓を映し、ヘルシンキ中央駅にゆったりと到着した。

そして、その街の賑やかさと穏やかさに不思議な安堵感を覚えた。