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 翌朝、といっても10時ごろ、ハジャイからいよいよマレーシアに向けて移動することになった。
熱いアスファルトの上をハジャイ駅まで荷物を引っ張って移動する。熱が体力を奪って言ってるような変な実感が湧いた。

 なんとかハジャイ駅に到着し、70バーツの切符を購入し、135分発のスペシャルエクスプレスとかいう名前の唸るディーゼル気動車に乗り込む。ホームと入り口には段差があり、そこを荷物を持って上るのが大変だ。

 列車は指定席なのだが、自分の席を探して、マレー系っぽい奥様方が座っている一角の中に入り込んだ。

乗客はマレー系やイスラム系の人々と、休暇を終えた後の中華系のおっさんばっかりだった。おっさんは「No worry! Anywhere can seat!」とか言っている。車内ではマレー英語が炸裂していた。しかし、これで中国で痛い目にあったので、自分の席を保守することにした。

 しばらくして車掌さんが車内を見回る。「Padang Besar nah?」と乗客に聞いて回る。そのあともう一度見回りに来て、「Go Malaysia nah?」と確認すると、自分の周りの奥様方がひとつ後ろの車両に消えていった。Padang Besarを国境が通っているのか、両国に同じ名前の街が隣り合っているのかは定かではないのだが、タイのPadang Besar駅と言うのもあるようだ。

 列車が走り出すと、風景はタイのようなマレーシアのような判別のつかない感じとなっていたが、踏切で出会う車のナンバープレートがまだここがタイであることを教えてくれている。

 しばらく寝ていると、タイ側のPadang Besar駅に到着した。扇風機とファンの組み合わせが気持ち良く、この気動車とも今日でお別れなので、ゆっくり寝れてよかった。意外と乗り心地が良いのである。タイ側の駅の駅前には何もなかった。

 列車はタイ国内移動の乗客が皆降りたことを確認すると、ちょっとだけ走って、マレーシアのPadang Besarに到着した。タイ国鉄の白い駅名表示から、青の眩しいKTMの駅名版に白抜きで「Padang Besar」と大きく書いてあり、マレーシアに来たことを実感した。列車から降りるとき、マレーシアの高いプラットホームとタイの気動車の間には厚めの木の板が敷かれて隙間が埋められていた。

 列車を降りると、タイの出国審査が待っている。列は長めだが、タイの警察官が出国スタンプを押してくれた。続いてマレーシア側の入国では指紋を取られた後に、入国審査官がスタンプを押してくれる。

 出入国審査は簡単だったが、そのあとKTMの切符を買って列車に乗らなくてはならない。ペナン島最寄りのButterworthまで切符を買うために、重い荷物を持ち、階段を上り、売店で500バーツを52リンギットに交換した。そうして、ようやく切符を手に入れた。値段は11リンギットと安い。安すぎるような気もする。

 また階段を下りて安堵する。さきほどタイから来た気動車から乗り換えられる、クアラルンプール行きのイケてそうな特急列車を見送る。

 特急列車を見送った後は、しばらく駅でコンテナを観察することになる。20ftコンテナが多く、マエルスクや中国系の他に、イランシッピングカンパニーなど、見慣れないコンテナもいくつか貨物列車に載っていた。JR貨物の小さいコンテナに似たようなものをタイ国内では見たが、やはり狭軌鉄道の国際貨物は20ftがメインなのだろうか…などと思った。

 30分が経ち、自分の乗る電車がホームに入線してきた。普通の3両の通勤電車だった。なんだか地方の電車っぽい。電車の客が降りる前にホーム上の客は電車に入り込み、席めがけてまっしぐらという感じだった。

 しかし、意外と電車は空いていた。問題はこの電車の車内が暑すぎるということだった。電車が走り出してもエアコンは効かない。ついていないのかもしれない。マレー人のおばさんがたまらずスカーフを顔にかけて、電車の連結部分に近い壁によっかかって寝始める。すると、電車はズガン!と音を立ておばさんの眠りを妨げるのだ。

 そしてなんだか焦げた臭いが充満する。ズガン!と音を立てた壁のすこし上を見ると「ヒュンダイ コリア 1996」と書かれていたので、電車自体も古そうだ。きっと古いものを末永く大切に使おう作戦が発動されてそうだ。

 電車の車窓にはマレーシアの農地が多めの広々とした風景が、ジャングル多めのタイと対照的な感じだ。しかし、爽やかな風景とは裏腹に電車は暑かった。へばっているうちにアロスターを過ぎた。

 なんだかんだでButterworthに到着、重い荷物を持って階段を上り下りし、フェリーを目指す。フェリーは1.2リンギットだが、暑いので自販機で豆乳を買ってフェリーを待ち、2本も飲んでしまった。結局豆乳の値段の方が2リンギと高くついた。

 乗客はどこから来たのか欧米系の人が多い。タイパンツとか履いていないので、KLから北上しているのかもしれないし、バスかもしれない。

 車がフェリーに乗り込んだ後に、ぞろぞろと人間がフェリーに乗り込む。フェリーが岸を離れると、ちょっと高いビルの目立つジョージタウンが出迎えてくれる。あんも―(白人)達は思い思いに写真を撮っていた。

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