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武漢から南への旅は唐突として始まった。駅の窓口に並び、広州への切符の購入をTryする。硬いベッドの購入は絶望的だということがわかったので、軟らかい方にTryすることにする。軟らかい方は、希望した列車は無いらしいが、20分後の列車がある。可以嗎?と唐突にして決断を迫られる。思い切って買うが、窓口のスタッフが名前を記入するのがものすごく遅い。時間は15分になった。この武昌駅の窓口が曲者で、2階にある。そして、荷物を預けてある場所が1階にあるので、急いでダッシュするものの、人民をかきわけーの、無駄にデカい駅を走り回り、3分でどうにかすることができた。

 その後、駅に入り込み、爆発物検査で6分も待たされる。普段は気にしないが、この時ばかりは人民の割り込みを許すことはできない。そして、列車の改札にたどり着くが、既に人影はなく、どのホームへ向かえばよいか、丁寧な案内は無い。時間がないものの切符を取り出し、列車番号を見ると、列車が深圳行ということがわかったので、ホームへ降りる。

 駅もデカいが、列車も長い。しかしながら、駅の出入り口は1か所という不親切仕様になっている。この列車で良いのかと列車の乗組員に聞くと、「お前のは一番後ろだ」と言われるので、走って一番後ろまで向かっている途中に、先ほどの2両後ろの車掌は、唐突に列車のドアを閉める。「さすがにヤバいな」と思い、ドアをノックすると、列車の中に入れてくれた。

 列車に乗り込んだが、列車はしばらく動き出さない。その後、通路を占拠したりしている人や、硬いベッドの客車のお客さんに不好意思を連発しながら通過する。人の気配には見向きもしてくれないものの、声を掛けるとみんな道を開けてくれた。その優しさに申し訳ない気持ちになる。それくらい通路は空いていなかった。

 なんとか自分の不本意な軟らかいベッドまでたどり着くことができた。自分の下のベッドではおばさんがみかんを食べているところだった。そこにひと声かけ、おばさんが「そうだよ。ここだよ」というと、ずけずけとお邪魔し、2段ベッドの上段に荷物と体を置く。そして、無意識に眠りについた。

 出発してから2時間ほど経ち、車掌に起こされる。「切符見せろ」と言っているようなので、赤い切符を手渡すと、カードのようなものを渡してくれる。そして、それをズボンのポケットに入れて、列車は深圳へ、意識は夢の中へと走り出していった。

 そしてまた、すぐ車掌に起こされた。すぐだと思ったが、8時間くらい経っていた。カードを車掌が切符に換える。もし中国語がまともに話せたら、このまま深圳に行けたかと思うと、すこし残念である。なんでかというと、広州駅があまり好きではないからだ。列車のトイレに行こうとしたら、誰かが紙を突っ込んでたらしく、詰まっていた。列車は駅に入り込んだものの、どこの駅に到着したか見当もつかない。しかし、ここで降りろってことだろと解釈し、だだっ広いホームに降り立つ。

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