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219日、今日は電車で蘇州まで行くことにした。朝830分にホステルを出発し、上海南駅を目指す。行きは普快の蘇州行き、といっても途中駅はよくわからない駅が1つだけだ。地下鉄と駅に入る前の爆発物検査が並んでおり、地味に時間がかかった。駅に入ったころに952分発、蘇州行きは検票(改札)となった。中国では列車ごとに改札が行われ、それまでは駅の待合室で待っていなければならない。そのため、大都市の駅では黒山のなんとかと言うに相応しい状態となる。人だかりで済む感じではない。幸いにも列車は蘇州を終点の列車にしていたため、それほど人は少ない。

 この列車は始発駅の江西省からずっと走って上海についた後のようで、検票後列車に向かうと、前の駅から乗っていたおばさんが自分の席に座っている。まぁ臨機応変に別の空いている席に座る。列車は客車列車で古いが、間接照明の明るい設計になっている。その反面、ゴミや種で汚い床とのコントラストが目に付く。

通路を挟んで向かいの席で漢民族っぽい別のおばさんが少数民族の少年にデカい袋をあげていた。見た目はマレー人っぽい少数民族の少年はおばさんにレーズンを勧める。おばさんは食べないと言いつつもビニール包装を破り、それを口に入れ、種を何気なく床に吐き出した。

とりあえず話しかけてくる人もいないし、車内の治安はまぁまぁOKという認識となり、コートの内ポケットに財布やパスポートをぶっこみ、ファスナーを閉めて、鞄をチェーンで自分のジーンズのベルトを通すところに接続して眠る。私の隣には上海を出る前から疲れ切ったおじさんが死んだように寝ていた。

 起きたら、昆山駅というところに列車が到着した。ここで出稼ぎっぽい何人かが降りた。マレー人っぽい少数民族の少年と漢民族おばさん、寝てるおじさん、私の席を占拠しているおばさんは蘇州まで乗っていくらしい。少数民族少年の中国語は聞き取りやすく、彼が電話をかけ始めると、「うぇい? 今昆山出たところ、次が蘇州。いまどこにいんの、ウーシー? あいつどこかって? おれもわかんない。」とか話している。

おばさんが、「食うものならいっぱいあるんだ」と言って少年に渡した袋から林檎を出して食べ始めた。そして林檎の食べかすも床にボトっと落とした。あたかもそれがあるべき姿のような錯覚に陥る。

そして、蘇州に着く手前、おばさん車掌が車内販売のカートに少数民族少年が食べているプルーンのようなものを沢山詰め込んで、大声で販売を始める。最初は「110元! 土産になるぞ!」とか言っている感じで大声を出している。そしてしばらくして、「よしわかった!310元だ! どうだ! 買いだろ!?」みたいなことを言い始める。その後やけになって袋を破り、「どうだ、食ってみろ!」みたいなことを言いつつ勧め始める。不人気のようらしく、誰も手に取ろうとはしなかった。乗客が「こいつ必死だな」みたいな感じで笑い始める。南京機務段だっけ、お疲れ様です。

 蘇州に着くと、なんか小さくてわかりやすい感じになっているのかなと思ったら、やっぱり期待は裏切られる。そこには無駄にデカい駅と、デカい街があった。なんとなく地図を拾い上げて、肉挟膜とかいう10元もする中国式ハンバーガーを食べて途方に暮れる。

なんとなく覚えやすかった楽橋とかいうところに地下鉄に乗っていく。1回乗換があって、そこが昔の秋葉原駅みたいに別の路線のホームを通路代わりに使うようなスタイルになっていてわかり辛いけど、なんとか乗換をする。

そして上海と違って、降車中の人を押しのけて乗車する率が上がる。マナーは上海に比べるとちょっと悪いかもしれないけど、「上海を中国だと思っちゃいけない」との友人の言葉を思い出し、これはリアルな中国体験の序章だとか言い聞かせ、自分を強く持ち直す。

 楽橋につくと、そこは巨大な道路が交差する交差点で、なんだかスモッグが酷い。とりあえず全家(ファミマ)に逃げ込み、マスクを確保する。20元も使ってしまったが7枚入りなので、今後も役に立つだろう。とりあえず、霞んで見えるお寺の卒塔婆を目指して歩く。お寺は写真で見ると美しい建物だが、実際に来て見ると信号無視の車や、クラクションの音が雰囲気をぶち壊す。

 このお寺は報恩寺というお寺のようで、中に入るととりあえずは緑が多くて静かだった。大きな仏像の向こう側に卒塔婆があり、左から3階回ればご利益があるが、反対に回ると厄難が降りかかると書いてある。卒塔婆の周りにはそれぞれポーズの違う観音様がいらっしゃり、祈りつつ1回だけ回った。とりあえず左側にしかめっ面で早歩きで回る観光客、それぞれの観音様に祈りを捧げながら回る人、マニ車を回しながら回る人など様々だった。よく観察しながら回ると、1か所だけ、観音様の上に看板が掲げられていて、実はこっちが正面?って思ったが、真意はわからなかった。

 その看板に背に向け、仏様の元に向かい、賽銭箱に1元を出して、挨拶をしようとしたところ、隅にいたお婆さんに呼ばれ、名前を書け!とリストのようなものを突き出される。そこに漢字で名前を書いた。そのあと、「いくら出すんだ?」と聞かれる。1元と答えると、「え? 1元? 最低10元からだ」と言われ、しぶしぶ10元出す。1元でご利益なんてどうなの!?という発想なのかよくわからないが、なんだかご利益とかそういうものを意識しすぎているのではという気がした。生まれて初めて仏様の前で煩悩に塗れてしまった。

 蘇州の運河も景観としては面白いが、なんだか緑っぽくそんなに感動はしなかったが、ちょっと普通の中国を見た感じになり、ちょっと得した気分になっていた。蘇州は上海より物価が少し安めである。インフレは上海だけではなく、近くの省にも波及していることがわかる。

 その後、石路の方まで歩き、地元の人の生活を目にする。サトウキビがキビ単位で売られていて、買うと小さくカットして袋に入れてくれていた。城門を目にして、古街を眺めて、6時になってしまった。

 今回は綺麗な風景は時間切れであまりお目に掛かれなかったので、次回ももう一度来ることになりそうだ。今度はゆっくりしたい。

つづく

掛ったお金

4(上海地鉄) 上海南駅まで

15.5元 上海南→蘇州(K470 硬座)
20
元 マスク
8元 餃子
10元 コーヒー2
4.5元 切手
4元 絵葉書
24.5元 蘇州→上海(D9579 2等車)
2元 上海駅→ホステル