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朝、船のベッドで目を覚ました。そして体に感じる揺れに違和感を感じる。

外を眺めると、船は青い海ではなく、泥っぽい水の上を進んでいた。携帯電話を眺めると、6時30分で中国聯通の電波が入っているようで、中国の長江の中に入ったことに気が付く。時間を逆算すると、河の中に入ってから5時間近く航行することになり、昨日の漁船の位置関係もそれとなく昨日思っていたよりは辻褄が合う気がする。

 川に入ったことは理解できたものの、両岸がよく見えてこないまましばらく航行する。目測だと瀬戸内海よりも広いかもしれない。やがて右の岸に管制塔のようなものが見えてきた。空港ではなく、船の流れを管制するためのものらしい。その後もうしばらくして着陸する飛行機が上をかすめ、コンテナ港とクレーンの列が見えてくる。もはやここが河とは思えない光景だが、泥の交じった水だけが、ここが河だと主張しているようだった。甲板に出ると、蒸気機関が黒い煙を吐いており、がんばって川登りをしている感が伝わってくる。

 やがて、1時間くらい経ち、日本人のおじさんたちが出そろい、「とても河とは思えない光景ですね」と話しかけると、「本当ですよね。夏になると赤潮で真っ赤になるんですよ。飛行機で着陸した時なんて、窓からでもはっきりわかるくらい」とのことだった。さっきの飛行機は浦東国際空港に着陸する飛行機だったようで、上海市の大きさにすこし驚いた。

 朝食をとっていると、軍艦や海警、海事と書いた船とすれ違う。そして、中国各地からコンテナ船が集まっているようで、船名と一緒に、香港、厦門、南寧なんて書いた船が停泊していた。その後やがて船は黄浦江に入る。川登りから、川下りになるようなのだが、川が蛇行しているせいか、船の速度は遅く、遠く東方明珠塔の姿も霞んで見えるのだけれど、しばらく時間がかかりそうだ。やがて大きな橋をくぐると、上海のスカイラインがはっきりとわかる。そして船はゆったりと速度を下げ、徐々に接岸していった。

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