2013年6月8日、シンガポールのラーメン通の方とお話をする機会があった。彼はシンガポールにある四十数件のラーメン店を全て巡ろうとしている。
彼は私に尋ねた。「シンガポールに着てからラーメン屋に行ったことはありますか」と。
私はシンガポールから中国までどこにでもある商売っ気のあるチェーンのラーメンショップの名前を答えた。彼が残念そうな顔をしながら、「なんで行くんですか。あそこだけは絶対に行っちゃ駄目なのに」と言った。
私は「そうなのか・・・」と思いながらも彼がなぜそういうのかはわからなかった。しばらく歩くと「ラーメン祭り」というお店についた。そこで私は卵ラーメンというそのお店で一番ベーシックなラーメンに煮卵がついたものを頼んだ。美味しい。
ラーメンを味わったあと、彼はそのチェーン店について語る。彼曰くそのチェーン店はシンガポールに於いては、日本式ラーメン店のさきがけのような存在だったようだ。そのため皆一度は日本のラーメンを味わってみようとそこへ行ったらしい。
私はラーメンにそんなにこだわりが無いこともあり、商売っ気のあるラーメン屋さんでも「あぁラーメンだな」と思ったが、シンガポール人の中には「日本のラーメンってこんなもんか」と思った人もいるようだった。
その後なぜか、シンガポールはラーメンブームと言えるような現象が起こった。新しいラーメン店のほかにも古くから日本式のラーメンを売る店はあった。しかし、そのチェーン店から受けた印象から「日本のラーメンはこんな感じ」という印象が付き、そのせいかラーメン屋に行かない人もいたのだそうだ。
ラーメンはシンガポールでは12ドルくらい。ビッグマックが6ドルくらいなので、約2倍の値段。日本円で言うと、ビッグマックが640円だとしたら、1280円くらいのものを食べている感じだ。ラーメンはここではご馳走なのだそうだ。それなのに「美味しくない」なら「いかない」となるだろう。
日式ラーメンに対する印象が芳しくない最中、シンガポールにラーメンチャンピョンというお店ができ、そこにも「一度食べてみたい」という好奇心から行列ができた。
やっぱりシンガポールに住むと楽しいことに飢えるのかもっていう考えも頭をよぎったが、私の家の近くのBugisのモール内にあるラーメンチャンピョンは日本の南から北まで日本で人気になっているラーメンの有名店が出店していて、皆好きな店で、食べたいものを買って、一緒に食べれるという場所で人気を集めたらしい。
「好きな店で、食べたいものを買って、一緒に食べる」というのはシンガポールのホーカーズにも通じるコンセプトだと思ったし、なんか美味しそうだというよりも、楽しそうだって印象を受けてエンタテイメント性も他の飲食店に比べてあったと思う。
ラーメンチャンピョンはシンガポールの人々のラーメン店に対する印象を変えたらしい。「それがラーメンチャンピョンの偉いところ」と彼は言った。それからしばらくして、シンガポールで彼のようなラーメン好きな人々は、日本人がシンガポールに出店したお店を巡るようになったのだそうだ。
日本のラーメンの第一印象はあまり良いとは言えなかったが、ラーメンチャンピョンはその印象を変えたようだった。
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